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ノビル(野蒜)Allium macrostemon

別名:ヌビル(沢蒜)、ヒル(蒜)

ヒガンバナ科 ネギ属

 

図鑑などには、日本全土の日当たりの良い草地、土手などに普通に群生する多年草と説明されている。幼少期を過ごした北信州では、図鑑のとおりであったが、秦野で最初に出会ったのは、マックと二人で散歩している時、林縁やさらに入った林の中であった。秋落葉樹が葉をおとして明るくなった辺りに緑色の塊があるのに気が付いた。そうした塊がいくつもある。近づいてみるとアサツキかノビルのようである。引き抜いてみればわかると思い引き抜くとノビルのような球根をもった茎が簡単に抜ける。ノビルがこんなに集まっているのは凄いと思い、塊ごと引き抜くと球根の小さなものばかりで食用にはなりそうになかった。大きな球根を選んで持ち帰って、生のまま味噌を付けて食べたがくせが少なく簡単に食べられた。秦野ではこんな日当たりの悪いとこにも沢山生えているのには驚いった。

ノビルの花は開花するが、種子を作る系統はごくまれである。代わりに花序に開花前後に小さな珠芽(ムカゴ)を着生し、これが種子代わりになる。ムカゴは紫黒色で固く密生する。分球でも繁殖する。分球繁殖したものが、林の中に塊を作って生育しているものだと思われる。

ノビルは山菜としても知られているが、採ったものをそのまま味噌を付けて食べるくらいである。ネギの仲間であるから、もっと食べ方があるはずだと思い調べてみた。1、餃子などの具の一つとして刻んでいれる。思い出したが、母親が集めたノビルを刻んで味噌とからめておやきの具にしたことがある。子供には苦手な具であったが、今であれば食べてみたい具である。2.天ぷらの衣をつけて揚げる。3.らきょうのように酢漬けにする。4.茹でて酢味噌(ヌタ)で食べるなどが考えられる。

驚くことに、万葉集にノビルの調理法が載っている。醤酢(ひしはす)に蒜搗(ひろつ)き着合せて鯛願う、我にな見せそ小葱(なぎ)の羹(あつもの) 長忌寸意吉麻呂

意味、醤油と酢にノビルを混ぜ合わせて鯛を食べたいと願う。私に見せるな水草の吸い物のような不味いものを。ノビルは高級食材として扱われている。

名前の由来:ノビルは「野蒜」と書き、「蒜」はネギの総称を表すため、野に育つネギといった意味であるという説や、食べるとツーンとした辛みがありヒリヒリするのがヒル=蒜となったと言う説などがある。

 

上;空き地に生えたノビル、下;初夏に茎頂に着いたコンペイトウのような形の紫黒色のムカゴ